飛ぶ鳥を落とす勢いの“若手No.1”時代から、すでにベテランの貫禄すら漂う凄腕ドラマー、玉田豊夢さん。多数のライヴ、レコーディングの現場で表現される多彩なドラミング、サウンドは、もはや日本の音楽シーンの中心にあると言えるでしょう。そして楽曲に彩りを与える豊夢さんの変幻自在なスネア・サウンドはとっても魅力的ですね。
スネア・ドラムのスネア・ドラムたる所以は、スネア・ワイヤー=スナッピーにあります。ここでは、豊夢さんが愛用するカノウプスのバックビート・スネア・ワイヤー30(Back Beat Snare Wire 30)について、そのこだわりを豊夢さんご自身に語っていただきました!
── 30本にすると凄くバランスが良かった ──
「僕が最初に使ったのはヴィンテージ(Vintage Snare Wire)で、これはクリスピーな音を作るときは凄くいいんですけど、自分的にはタイト過ぎちゃって、もっとズバッとした幅を出したいときに、ちょっと足りないなって思い始めたんです。昔はスネアのピッチも高くて、オープンな音にしていたので、そういう感じには凄く明るくて合っていたんですけどね。そんなときにバックビート(Back Beat Snare Wire)の20本が出て、しばらくこれのDR(メッキなし)を使ってたんです。これはプレートも厚いので、それなりに重量感が出たんですけど、本数は20本で(ヴィンテージと)変わらないので、“このザクッとした感じで、もうちょっと本数が多かったらな”っていうイメージがずっとあったんです」
「それで僕のシグネチャー・スネア(SIG-1460-TT1:14”×6”/2013年11月から期間限定で発売。現在は生産終了)のときにスナッピー(=スネア・ワイヤー)の本数も選べることになって、最初、プロトタイプのバックビートの42本を着けたんです。42本だとちょっと多いなって感じだったので、僕の前に出たカースケさんのシグネチャー・スネアが13”で30本がついていたので、“30本いけるんだ!”ってことで、14”で30本を作ってもらったんです。そのときは市販品じゃなくて、このスネア用にってことだったんですけど、もう“あ!コレ!”って感じでした」
玉田豊夢シグネチャースネア SIG-1460-TT1
「プロトタイプでは、42本と30本と24本も作ってもらったんです。42本だと、自分が思っているよりも“ジャバ”っとしたところが増え過ぎちゃって、転がるようなゴースト(ノート)がちょっと出しづらい。24本だと、ちょっと音が点になっちゃう感じがしたんですね。で、30本にすると、やっぱり凄くバランスが良かったんです」
── ハイ・ピッチにすることがほとんどない ──
「スネアってハイ・ピッチにすると、どんどん音が点になって、音がタイトになっていくんです。そんな中でもバックビートの30本をつけると、タイコ自体はタイトになるんだけど、スナッピーのザワツキというか、“ズバッ”というのが消えないんです。高いピッチにしてもいいです。ただ実際、僕はスネアをハイ・ピッチにすることがほとんどないんです。よっぽどレコーディングで“この曲はもうカンカンの方がいいです”ってアレンジャーさんに言われたらします、ぐらいで(笑)。自分から進んではやらないですね。自分の中で“これ以上は張らない”っていう境界線みたいな、“これ以上張ると、タッチも音も、硬くなって点になる”っていうポイントがあるんです。自分が気持ち良く音楽に入り込めるために、ですね。バックビートの30本はピッチを上げても下げてもバランスが取りやすいです」
── スナッピーを“張りめ”にする理由 ──
「スナッピーの張りを緩めにするとタイコの音とスナッピーの音が一体化しないんですね。タッチもそうなんですけど、全部が一塊になってスネア・ドラムの音になってほしいところが、スナッピーの張りが緩いと、ゴーストとかもジャバジャバになって、細かいビート感っていうのが出しづらくなっちゃうんです。だから僕は基本、ノーミュートでもミュートしても、スナッピーは普通よりちょっと張りめにしています。ジャラーっと残らないのが好きなんです。オープン・リム・ショットしたときにも、ちょっとスナッピーが緩かったりすると、もう気持ち悪くて、すごく叩きづらいです」
── 厚ぼったいヘッド、30本のスナッピー、ミュート加減が、今の自分のポイント ──
「スネアの(打面)ヘッドは、レモのエンペラーXが今は大好きです。ただでさえ分厚いのにドットまで貼ってあるヘッドで、それをほとんどのスネアに張っているんです。厚ぼったいヘッドって“ボワーン”とした成分が出ちゃうので、いつも使っているフェルトのミュートで、いいところに持っていくっていうのがすごく好きなんです。厚ぼったいヘッドと、30本のスナッピーと、ミュート加減っていうのが、今の自分のポイントになってますね。だから(定番の)スネアには(コーテッド)アンバサダーっていうのはないですね。タイト過ぎて、リム・ショットしても点に感じてしまうんです。もっとバラけてほしいんです。で、あえて点にしたりとかは、自分のショットの強さ、スピードで、出したい。ただスティックを落としただけで点になっちゃうのはすごく苦手です。普通だったら扱いにくいヘッドだったりっていうのが、今の自分にとっては扱いやすいヘッドだったりします」
── マイクを通した音がどうなっているか?も重要 ──
「僕にとっては、“マイクを通した音”がどうなっているか?っていうのが重要なんです。ホール(コンサート)にしてもレコーディングにしても、ドラムの、すぐそこで鳴っている生音をお客さんは聴くわけじゃない、っていう状況が多いので。なので、生音で理想的な音になって、しかもマイクとPAを通したときに、それがより形になっているにはどうすればいいかっていうことを模索していますね」
「そういうことをひっくるめて、生音も、マイクを通した音も、バランスを取るために、この30本のスナッピーは、まさに“ちょうどいい”ですね。20本のクリスピーな成分も持ってるし、42本のザクっとした“面”で鳴るようなワイルドな感じも出るし、でも中途半端にならないっていうのもポイントだと思います。どっちつかずにならずに“コレだ!”っていうのが見つかるというか」
── “吸いつきの良さ”と“しっかり鳴る”バランスの良さ ──
「スナッピーに関して、僕は、もはや使ったことがないメーカーはないと思います(笑)。国産から海外のものまで、本当にいろいろ試してきていますけど、カノウプスのスナッピーに共通しているのが、“吸いつきの良さ”と“しっかり鳴る”というところのバランスの良さですね。あとは明るくて、変なクセがない。だからどのスネアにつけてもバランスの取れた音になってくれるんです」
「バックビート30は、僕のシグネチャーだけじゃなく、他のスネアにも張っています。カノウプスのスティール(The Steel)の14”×5”にも張ってるんですけど、それがまたすごくいいんですよ」
「カノウプスの紐(CNC)は他社のものと比べて柔らかいんです。ちょっと伸びるというか。柔軟性が高いってことで、叩いたときにちょっと沈んで戻ってくるような感覚があるんです。僕はそのちょっと沈んで、柔らかい紐をちょっと締め気味にするっていうバランスが好きなんです。他社の硬い紐は、すぐに戻ってくると思うんで、立ち上がりが早いんですけど、そんなに締められないというか、ちょっと締めると詰まっちゃったりして……。カノウプスの黒い紐は、馴染むまでにちょっと時間が必要なんですけど、吸いつきとズバッと鳴ってくれるバランスがいいんですよ。バックビートの30本とは特に相性がいいと思います。あと、スナッピーの紐を通す穴の処理が、紐が切れにくくて凄くいいですね。そのあたりも重宝しているポイントですね」
豊夢さんのスネア・サウンドに、カノウプスのバックビート・スネア・ワイヤー30あり!ですね。みなさんもぜひ、手に取ってご自分のスネア・ドラムで試してみてください!